日本の冬は冬型の気圧配置なると、西高東低の気圧によって、北西の季節風(北風)が強く吹いて、日本海側では雪が降り、太平洋側では空気が乾燥して晴れることとなります。このように日本列島は季節の移り変わりを楽しめる反面、庭木にとってはとても寒い冬と高温多湿の夏という、とても過酷な環境と言えます。
そんな日本の冬のお庭は、寒風、霜、凍結、雪などで、地域によってはとても冷え込むため、寒さに弱い植物はそのままにしておくと枯れてしまうので、温暖な地方以外では、寒さから庭木を守ることもお手入れのひとつに加えておきましょう
このページでは、大切な庭木が寒い冬を乗り切る方法をプロの庭師が解説致します。
寒害を受けやすい庭木
冷たい北風や霜、雪、そして凍結などで、寒害を受けやすい庭木は暖地性の常緑広葉樹で、モッコク、サザンカ、キョウチクトウ、クチナシなどが挙げられます。
特に若い木や移植直後で根付いていない樹木は、寒風により水分が不足したり、霜で葉が枯れてしまったりとういうことがあります。
また、サクラ類やカエデ類、ケヤキなどの樹皮が薄い樹種は、幹がひび割れたりすることもあるので、このような場合は保護が必要になります。
風よけでも効果がある?
冬の寒風を防ぐ方法は、防風垣や防風樹(防風林)などがありますが、家屋が隣接している都市部で、寒風が直接当たらないような場所では風よけは特に必要ないかも知れませんが、植え付け直後の根付いていない苗木や若木などは簡単なもので良いので風よけを用意しましょう。例えば、ベニヤ板やポリステルの波板などで、北側を覆い、北風が直接当たるのを防ぐだけでも、かなりの効果があります。
根元の乾燥と凍結防止
庭木は植え付けを行った年の冬に寒風や霜や雪などで根を冷やしてしまうと翌年の生育に影響を及ぼしてしまいます。中には乾燥や凍結などにより枯れてしまうというケースもあります。特に苗木や若木の根張りの浅いものや、モミジ、ゲッケイジュ、ソテツ、シイなどは根元の保護を行うことが必要です。
根元の保護には、庭木の根元あたりに、藁、腐葉土、ピートモス、バークチップ、ウッドチップ、水苔、落ち葉などを敷いて、地面の乾燥や凍結を防止するマルチングという防護法がありますが、この場合は、枝幅程度の範囲に藁を厚めに敷き詰める方が効果が高くなります。
幹巻き
植え付けた年の冬には、庭木の幹の保護も大切です。植え付けた年は、まだまだしっかりと根付いてはいないため、寒風のために幹が乾いてしまい枯れてしまうこともあります。そのような場合には、藁や菰を幹に巻く、幹巻きが効果的です。
幹巻きは庭木の根元に穂先を上にして巻き付けたら、次からは細い穂先を下に向けて巻いていきしょう。この幹巻きは春になったら、早めに取り除いて焼き捨てましょう。
雪対策
降雪量が多く、雪の重みで枝が折れる可能性が予測される地域で、アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツ(マツ)、などの主木には雪吊りを行いましょう。降雪の程度により、雪の重さで枝や茎が折れないように支柱を立てたり、細い枝をまとめて縄などで縛ったり、大量の降雪が予測される場合は、囲いを作るのも得策です。
耐寒性が強い庭木/耐寒性が弱い庭木
庭木には、耐寒性の度合いで、耐寒性が強い植物、耐寒性が弱い植物、そして中間的な植物に分類されています。非耐寒性と半耐寒性の植物を植えている場合は、そのエリアの耐寒性ゾーンを確認して、その土地で対象植物が耐寒可能かどうかを調べておきましょう。
耐寒性が強い植物
オリーブ、シャラ、イヌツゲ、ハナカイドウ、ニシキギ、コブシ、ソメイヨシノ、ジューンベリー、ヤマボウシ、エゴノキ、ソヨゴ、マンサク、アオダモ、モミジ(イロハモミジ)、アジサイ、ローズマリー、クリスマスローズなどは、関東地方でも対策を行わなくとも露地植えで冬越しが可能です。
耐寒性が弱い植物
ハイビスカス、リューカデンドロン、ドラセナ、ガジュマル、ユーカリ、メラレウカ、マリーゴールドなどは耐寒性が弱いので、関東地方の露地植えでは冬越しは難しいため、防寒を行うか、屋内へ移動させましょう。
耐寒性ゾーンマップ こちらで植物の耐寒温度が調べられます。
冬の水やり
冬の時期には、気温の下がる夜に水やりをしてしまうと、根が凍ってしまう場合がありますから、春夏より水やりは少し控え目にして、土の表面が乾いていたら水やりを行うという程度にしておきましょう。従い、水やりは暖かい日の午前中に行いましょう。
水やりの方法はこちらから 水やり3年⁉プロの水やりの方法を庭師が伝授
土壌改良
冬は、落葉樹などの多くの植物が休眠期に入るため、土壌改良を行う適期です。腐葉土や堆肥、土壌改良剤などで団粒構造の土に土壌を改良しましょう。
土壌改良を行う際には、深さ50㎝程度の深い場所の土と、表層の土を入れ替える天地返しという作業も行っておきましょう。天地返しを行うことにより、土がほぐれ、病害虫の駆除を行うこともできます。
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寒肥(かんごえ)
寒肥とは、春の庭木の生育が旺盛な時期に効き目が現れる様に、冬の間に与える肥料のことで、緩効性肥料を施します。
肥料の与え方はこちらから 庭木への肥料の与え方を庭師が伝授
庭木が被害を受ける主なものは、病気、害虫、自然障害ですが、この中でも季節の移り変わりによる被害は、お手入れを施すことである程度は被害を抑えることができます。日本の冬は植物にとっても過酷な時期ですが、日中の暖かい時間帯を上手に使って、庭木や花木が冬を乗り切れるようにお世話をしてあげてください。どうしても難しいようなら是非ご用命くださいね。庭木のメンテナンスはこちらから
2024年1月31日更新
執筆者:造園技能士 竜門 健太郎