「ガビオン」と聞いてピンとくる方は、まだまだ少ないのではないでしょうか。ガビオンとはメッシュ状の格子パネルを立方体に組み上げボックスをつくり、その中に自然石を詰めて使います。日本では「蛇篭(じゃかご)」や「ふとんかご」とも呼ばれます。西洋では古くから建造物や建築、外構(エクステリア)などに利用されてきました。日本でも最近では商業施設やホテルなどで見かけることも多く、おしゃれな外構や庭づくりをする方たちからも注目されているアイテムです。
この記事では「カビオン」の基礎知識や魅力を解説します。
ガビオンの歴史
ガビオンの魅力
おしゃれ
自由な使い方ができる
建物、木や植栽と調和しやすい
環境にやさしい
ガビオンの外構(エクステリア)アイデア
門柱、門壁
フェンス、目隠し
プランツボックス、プランター
ベンチ、テーブル
石の種類
割栗石(わりぐりいし)
チャート石
ミカモ石
ガビオンのデメリット
値段が比較的高い
安全性
まとめ
ガビオンとは
亜鉛やアルミ合金など鉄製のワイヤーを加工した、メッシュ状の格子パネルを立方体に組み上げたボックスの中に、大きさや形、色がさまざまな石を詰める「ガビオン」。おしゃれな見た目から、商業施設やホテルなど人が集う場所に使われることも多く、近年では住宅の外構(エクステリア)アイテムとしても注目されています。
ガビオンの歴史
アジアにおけるガビオン(蛇籠)の歴史は古く、2000年ほど前に中国で考案され、竹で作られて川岸や海岸の護岸に使用されていたという文献があります。
日本へは西暦380年~640年頃に伝来したといわれていますが明確には明らかになっていません。詰石は昔から変わりませんが、メッシュ状の格子パネルの素材は竹や柳から、明治時代の竹を鉄線で補強したものを経て、現在では亜鉛やアルミ合金などの鉄線が主流となっています。
使用用途は、古くは洪水から人や家、畑を守る治水工事で使用されていましたが、見た目がおしゃれでデザイン性もあることから、近年ではエクステリアや外構でも積極的に取り入れられています。
ガビオンは諸説ありますが、イタリア語の「gabbione(かご)」に由来し、「大きな檻」を意味します。語源からもわかるように、ドイツやイギリスなどの西洋では古くから、建築やエクステリアなどに利用されてきました。
アメリカのカリフォルニア、ナパヴァレーにあるワイナリー「ドミナス・エステート(Dominus Estate)」の壁は、ガビオン(蛇籠)で覆われていて、ひと際目を引く建築物です。詰石には近隣からとれた玄武石を使用しています。
ワインの保存に適している温度は一般的に13~15℃、湿度は70%程度で温度と湿度を一定に保つことがワインの熟成には欠かせないといわれています。ガビオンの壁は、昼の太陽の日差しを遮断し、夜の寒さを防ぎ室温を一定に保つ効果があります。
見た目だけでなく、もともとは人や建物を災害から守る役目があることから、機能性にも優れているガビオンはこれからのエクステリアを牽引していく存在になるかもしれませんね。
ガビオンの魅力
ガビオンの魅力は「おしゃれ」「自由な使い方ができる」「建物、木や植栽と調和しやすい」「環境にやさしい」などが挙げられます。
おしゃれ
ガビオンは無機質な鉄製のワイヤーと自然を身近に感じられる石のバランスがよく、見た目も独特な雰囲気とインパクトがあるにもかかわらず、ほどよい抜け感が個性的でおしゃれな外構にするにはおすすめのアイテムです。
ガビオンは組み合わせる素材や石の大きさや詰める量、詰め方などのアイデア次第で、印象をガラッと変えることができます。
淡い色合いの石を詰めることにより周囲に馴染む柔らかい印象に、ハッキリとした色合いの石を詰めると周囲とのコントラストがはっきりし洗練されたモダンな印象になります。もちろん、石の色だけでなく大きさや材質によっても雰囲気がまったく異なります。
家のデザインや外壁の色、植栽する植物の雰囲気に合わせるのか、あえて違う雰囲気にし差し色にするのか、ガビオンは自分好みにカスタマイズが可能なのでおしゃれの幅も無限に広がりますね。
自由な使い方ができる
ガビオンはサイズや形状を自由に変更できさまざまな用途に利用できます。
高さや幅を自由に調整してフェンスや目隠しに、細長いボックスを使い門柱に、ガビオンの中に土を入れてプランツボックスやプランター・花壇に、ガビオンを支柱として上に座板をのせベンチやテーブルに。
つくりはシンプルですが、外構のメインアイテムにもサブアイテムにもなるフレキシブルさがあるのもガビオンの大きな魅力ですね。
スペースの問題で門柱やフェンスの設置が難しい場合でも、プランターや花壇をガビオンに置き換えるだけで、個性的でインパクトのある空間になりますよ。
建物、木や植栽と調和しやすい
ガビオンの中は、自然素材の石を使用しており、鉄製のワイヤーは線が細く控えめなので、周囲の建物との調和も美しく四季折々どんな風景にも溶け込みます。
また、石の内側に不織布を敷いてから土を入れれば、植栽することもできます。土を入れるのが難しい場合は、鉢のままガビオンの中に入れるのもOKですよ。石のゴツゴツ感とアガベやサボテンなどのドライガーデンやロックガーデンに向きの植物との相性は抜群です。
環境にやさしい
ガビオンは自然素材の石と鋼線で作られています。石も銅線もリサイクル可能なため、環境にやさしいと言えますね。SDGsが話題となっている近年、ガビオンはエコの観点からも積極的に使っていきたい外構アイテムですね。
また、ガビオンは銅線の錆びを防ぐことで、耐久性を高めることができます。塗装をし錆びを防げば耐用年数は約30年にもなります。環境にやさしい素材を長く使う。これこそが究極のエコなのかもしれませんね。
ガビオンの外構(エクステリア)アイデア
ガビオンは自由に形を組み合わせることができ、使用用途はさまざまです。
門柱、門壁
門柱は玄関先にある独立した壁状の構造物のことで、家を訪れた人が最初に目にする場所でもあり、「住まいの顔」とも言えます。それだけに、デザインや周囲との調和にはこだわりを持ちたい部分ですよね。
郵便受けやインターホン、照明といった機能性を備えていたり、外観を良くしたり自分の家と周りとの境界線や防犯といった役割もあります。
ガビオンは、おしゃれだけど郵便受けやインターホンが設置できず機能性が不十分だったり、機能性は問題ないけど見た目がよくない、周囲との調和がとれず浮いてしまっているなどのお悩みを解決してくれます。
フェンス、目隠し
目隠しのためにフェンスなどを設置することで、隣家や道路からの視線を遮る事ができ、生活スペースを人に見られることなく、プライベート空間を保つことができます。また、人や動物が勝手に入って来ることを防ぎ、防犯対策にもなります。
目隠しを置くことのデメリットとして「圧迫感」を感じる人も多くいます。家のまわりを塀やブロックで囲んだ場合、光を遮ることで明るさが失われ、閉鎖的に感じるかもしれません。ガビオンの石の積み方によって生まれる隙間には、独特の抜け感があります。また、あえてボックスの上部には石を入れないことで抜け感を出し、圧迫感を少なくすることができます。
ガビオンを目隠しフェンスに使用する際のメリットとして、耐久性があります。ガビオンの耐久年数は約30年で、これは目隠しとして使われる、レンガ約25年、アルミフェンス約10年、ウッドフェンス5~10年と比較しても耐久性が高いと言えます。
プランツボックス、プランター
ガビオンは、自然石を使用しているので、植物との相性も良く、ガビオンにドライガーデンやロックガーデン向きの植物を直接植栽すると、オブジェのようなおしゃれなプランターとして使用することもできます。石の色や大きさにあわせて、植栽する植物を選ぶのも楽しみのひとつになりますよね。
門柱やフェンスなど大きなものを取り入れるのはスペース的に難しい場合や、庭付きマンションのお庭をおしゃれにアレンジしたい場合は、ガビオンのプランツボックスやプランターを1つ取り入れるだけでも、とてもインパクトがありおしゃれ感がアップします。まずは、簡単なものから取り入れてみるのもおすすめです。
ベンチ、テーブル
ガビオンを支柱として上に板をのせ、ベンチやテーブルにすることができるのもガビオンの魅力です。屋外で使用するアイテムは雨風にさらされることにより、経年劣化が早くなります。壊れてしまったベンチやテーブルはゴミとして処分せざるを得ません。ガビオンのベンチやテーブルは、板以外は銅線や天然石を使用しているため、耐久性もあるので、ベンチやテーブルとしての役目を終えたあとは、プランツボックスやプランターにリメイクして使うこともできます。
お子様が小さなうちはお庭で遊べるようにベンチやテーブルとして、お子様の成長にあわせてプランツボックスやプランターにし、お庭のおしゃれアイテムとして使えるのもガビオンの良いところですね。
石の種類
ガビオンは中に詰める石の種類も豊富です。詰める石の色や大きさ、形によって印象が全く変わってきます。石を選ぶ際は、色合いや大きさはもちろんのこと、用途にあわせた重さの石を選ぶようにしましょう。
割栗石(わりぐりいし)
割栗石(わりぐりいし)は、拳よりも大きいサイズ感で、砂利よりも大きくて存在感があります。形は丸みがなくゴツゴツとしているのが特徴です。黒やグレー系の色味のものが多く、コストが安く耐久性が高いのも割栗石の特徴です。
チャート石
チャート石は、主成分が二酸化ケイ素でできている堆積岩で、赤、褐色、淡緑灰色、淡青灰色、灰色、黒など、さまざまな色石があり非常に硬い性質があります。角張った形状で、表面がごつごつして、ワイルドな雰囲気で植物との相性が良く、ドライガーデンやロックガーデンでよく使用される石です。別名、岐阜石とも言われ、昔は火打ち石として利用されていました。
ミカモ石
ミカモ石は栃木県で産出される微細な石英粒からなる硬石で、赤褐色から灰色まで幅広い色調があり、花壇や塀の石積みなどに使用されることが多かった石ですが、現在では生産ストップとなり市場にあまり出回っておらず手に入りにくい資材のひとつになっています。そのため価格も高い傾向にあります。
ガビオンのデメリット
ガビオンは多様な使い方ができる反面、デメリットもあります。
値段が比較的高い
ガビオンを設置する際は、初期費用としてワイヤーや金具、中に入れる石材などの材料費がかかります。特に重量のある石材は、ガビオンの個数によっては大量の石が必要となり運搬費も高くなります。
業者に設置を依頼する場合は施工費も必要となります。ガビオンの材料は種類によって値段が様々なので、ご自身の好みやご予算にあわせた施工を業者と相談するといいですよ。
安全性
ガビオンを自分で設置する場合は、安全面に注意しましょう。特に石を高く積み上げたり、ボックスを重ねる作業は危険が伴うので、専門家の指示を仰ぐようにしましょう。また、ガビオンはきちんと設置しないと倒れる危険があります。ワイヤーの太さや、石の詰め方のバランスなど、自身で設置する場合には安全性を十分に確かめてから作業しましょう。また、門柱のように高さのあるガビオンを設置する場合は、鉄筋アングルやコンクリの基礎を立てる必要があります。ご自身での作業が難しい場合は専門の業者に依頼しましょう。
まとめ
ガビオンは自由な使い方ができ、おしゃれで存在感がある外構(エクステリア)アイテムです。詰める石の種類や色、形や大きさによって雰囲気が大きくかわるため、自身の好みや建物のデザインにあわせて選ぶことができます。一方で設置費用が比較的高く、設置にあたっては安全性に十分な注意が必要です。
ガビオンは様々なタイプの家に合うアイテムです。マイホームを彩る外構アイテムとして、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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2024年1月26日